先日Twitterのサイト上で、ハンドメイド作家さんたちを対象にした 、1日限定のギャラリーが開催されていて、興味深く見させてもらいました。  数年前(もっとかも)からのハンドメイドブームは、 実にものすごいものがあります。 アクセサリージャンルでしょうか?一番人気なのは。 その中で目に付いたのが 『宇宙・魔法・ファンタジーなどをイメージして』作品を作っている 、という作家さんがずいぶん多くいらっしゃったこと。  魔法(あるいは魔法使いについてのこういうイメージは いわゆる魔女っ娘アニメや『美少女戦士セーラームーン』 などから来てるのでしょうか? 販売品の作品には鍵のアクセサリーがたくさんあって、 今流行なのでしょうね。セーラームーンの公式にも、20周年記念の アイテムとして、販売告知がありましたし 少なくとも『ハリー・ポッター』シリーズの模倣・心酔からでは なさそうです。

 先日亡くなられたイタリアの作家ウンベルト・エーコ氏の 有名な小説『薔薇の名前』に書かれた世界のほうが、 中世の修道院を背景にしながら、むしろ魔術的で隠匿された 秘密に立ち向かうプロセスを詳細に伝えているようです。  現代でも『魔術』を公式に紹介している機関・個人が 実際にに存在します。 でも、サイト検索や著述本(洋書)で 見る限り、内容は『薔薇の名前』の方に近いです。 その昔、書物(識字)は修道院権力に独占され、庶民は 手に取ることも許されませんでした。それを外の世界に (つまり疎外されている、名もなき民衆の世界に)取り戻し、 伝達するための「作業」であり、自己研磨に支えられた 使命感が根底にあると思われます。 「夢・かわいい・魔法少女」を推奨しているものは 、そのジャンルには残念ながらないようです。 自分の立場から言うとしたら、「魔法アニメ」の イメージを「魔法」と位置づけているように思えて、 ちょっと疑問を感じてしまいました。

 ファンタジーは素適な世界に私たちを誘ってくれます。 空にはオーロラが瞬き、人魚姫やアリスがそばにいる、 日常の嫌なあれこれを解消するのを邪魔する妨害者も 遮蔽物も存在しない空間にいたいと誰しも思う瞬間があるでしょう。 至福の世界はその人を裏切りません。  今の日本でアクセサリー雑貨が(そしてそのハンドメイド作業が) 大人気なのは、ひとつには通常の労働対価があまりにも低賃金で 「作家作品」の売価と極端なアンバランスを作り出していることにも 原因があると自分は考えています。 (作家さんの手法を責めているのではありません)   でも、現実世界の認識や社会通念上の常識遵守というのも、 時には不可欠のものになります。太陽は朝には昇り、夕刻には 地平へと沈んで行きます。森羅万象は規則正しくあって、その 営みは厳格ですらあります。アクセサリーの杖や鍵のほかに 何が必要かを考えて見るのもいいのではないでしょうか?

 本当の魔法は宇宙・大地・海洋・一般社会のすべてに存在しています。自然の摂理と協調し、歴史に学び、生きとし生けるすべてのものに奉仕・役立てる方法を実につけ、実践する。これが「魔術」なのだと、私は考えます。